糖質や脂質不足の時は酵素で体のタンパク質を分解、細胞を削ってエナジーに変えるオートファジーが働く!
細胞をエナジーに変える仕組み

最近、断食が流行っているようだけど、そんなにたくさん脂肪を蓄えているの?

脂肪だけじゃなくて、細胞も分解するんだよ。

え、じゃあ細胞が無くなるの?

そうだよ。
細胞はいざと言う時のためのエナジー源と言えるね。

へ〜。

これは、オートファジーと言うエナジー補給のシステムなんだよ
今日はオートファジーについて勉強しようか?

聞きたい、聞きたい!

良いよ!
その前にタンパク質の代謝について話をするよ。
アミノ酸プールの事は覚えているね?

体には90〜100gのアミノ酸が遊離していてるんだったね。
このプールには3つの源からアミノ酸が供給される。
①体を構成するタンパク質由来
②食事性タンパク質由来
③代謝の単純中間体から構成される非必須アミノ酸
アミノ酸プールは3つの経路で消費される。
①体のタンパク質合成
②窒素含有小分子の前駆体として消費
③グルコース、グリコーゲン、脂肪酸、ケトン体、Co2+H2Oへ酸化される
出典:

遊離アミノ酸は細胞内や血液中、細胞外液など簡単言えば体液の構成成分として約100gを維持しているってコトだね。

そこから必要なものを作るために消費されたり補充されたりしてるんだよね。

うん。
これをタンパク質の代謝回転(ターンオーヴァー:ターンオーバー)と言うよ。

窒素含有ってどう言うコト?

エナジーの材料となる三大栄養素は何だった?

簡単、簡単。糖質と脂質とタンパク質!

そうだね。簡単に言うと糖質と脂質は炭素Cと水素Hと酸素Oでできてるんだけど、タンパク質はプラス窒素Nを含んでいるんだ。
窒素は酵素やホルモン、神経伝達物質、核酸(DNA)も含め体の構成は欠かせないんだよ。

細胞は生まれ変わるって言うからね〜。

アミノ酸プールにアミノ酸が入ってくるって事はタンパク質が分解される必要があるよね?
タンパク質の分解する仕組みとしてあるのがユビキチン-プロテアソーム・システムとリソソームだよ。
①ユビキチン-プロテアソーム・システム
ATP依存性の分解酵素。
損傷を受けたタンパク質や半減期の短いタンパク質を選択的に分解。
リソソーム
ATP非依存性分解酵素
②酸性加水分解酵素を用いてタンパク質を非選択的に分解
③エンドサイドーシスによって取り込まれた細胞外タンパク質を非選択的に分解

ATPはエナジーそのものだからエナジーを使って分解するかしないかの違いがあるんだね。

そうだね。
簡単に言うと要らないタンパク質にユビキチンという印をつけて、プロテアソームという解体工場で分解するのが①のシステム。
印をつけるときにエナジーを使うよ。

分解されたものがアミノ酸プールに入るんだね。

うん。
②がいわゆるオートファジーなんだけど、エナジー不足の時にごっそりとタンパク質を分解するシステムなんだ。
自ら(Auto)を食べる(phagy)と言う意味だよ。
*出典:東京工業大学ホームページ

細胞質の成分まるごと飲み込んで分解するんだね。

オートファジーの解明は東京工業大学の大隅良典(オオスミ・ヨシノリ)先生によってされて2016年ノーベル医学生理学賞を受賞して話題になったんだ。
細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を食べて分解することでアミノ酸を得る機能で、細胞内の「リサイクルシステム」とも言われている。
例えば1日絶食すると、肝臓の体積は約7割に縮小するという。絶食時、肝臓では生命を維持するためにオートファジーが活発に行われているのである。数日間食べなくてもすぐに死んでしまうことがないのは、このためだ。
*出典:東京工業大学ホームページ

へ〜。1日でもオートファジーは活性化するのか〜。肝臓の細胞成分を分解するんだね。

そうなんだ。しかも過剰なタンパク質を分解して、生存に必要なタンパク質に作り変える『リサイクルシステム』って言われている。

肝臓のタンパク質が過剰ってこと?

そう、もしかしたら肝臓と言う臓器自体は飢餓がなければもっと小さな臓器かもしれないってことだね!

ナルホド!

しかもエナジーだけでなくホルモンや核酸、全身の細胞に必要なタンパク質を新陳代謝させるための材料(タンパク質そのもの)になるってこと!

それが、大隅先生の研究では肝臓で行われる活動として紹介されてるんだけど、骨格筋でもオートファジーの起こる可能性も示唆されているんだ。
“近年、ユビキチン-プロテアソーム系の制御システムの解析が進み、骨格筋タンパク質の分解もこの系が中心であると言われている。そこでロイシンの分解に対する作用機構を解明す るために、カルパインとリソソームの活性を阻害する状態で MeHis の放出速度を測 定した。その結果ロイシン投与群では阻害剤の効果が認められたことから、ロイシン 投与はユビキチン-プロテアソーム系より、むしろオートファジー-リソソーム系を調節している可能性が示唆された。Kadowaki らのグループによる初代肝培養細胞のタ ンパク質分解の実験系から、mTOR を介したオートファゴソームの形成をロイシン が調節することを示唆されている。
(中略)
無タンパク質食摂取のラットへのロイシンの投与は、ユビキチンリガ ーゼ(Atrogin-1, MuRF1)の遺伝子発現を減少させず、オートファジーのマーカータン パク質である LC3 の活性型である LC3-II の発現は顕著に減少させた。以上より、ロ イシンの摂取による分解抑制にはオートファジーの制御が強く関わっていることが 考えられた。”

骨格筋に対するアミノ酸の効果を調べたんだね?

そうなんだ。あくまでもラットの話だけど、分枝鎖アミノ酸のルーシン(ロイシン)が制御しているのはオートファジーで、マーカータンパク質の発現を減らしたって書かれているんだよ。

ってことは、ラットの骨格筋ではオートファジーのマーカーが活性されることは前提での研究ってことだよね。

この研究ではそういう事になるね。

この全身で起こるオートファジーは不要な細胞からリサイクルするから全身の細胞が新しく生まれ変わる抗老化作用(アンタイエイジング作用)があるって言われてるんだよ!

へー、人間ってすごいね!

そして、栄養不足になっても人間が生きていけるのは体の構成成分である肝臓や全身の不要な細胞を分解しているからってことは間違いないね。